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これ以上消え去らせてはなるまい、石垣を!
2011.12.05 (月) 金唯正 contributor@jejujapan.com

  金唯正文化コラム 

 
   
▲ 撮影: 金唯正
 
済州が初めての訪問客は薄黒い玄武岩の行列に驚く。海岸にも石、垣根も石である。足先にひっかかるのはことごとく石だから、済州の人々は足を高く上げて歩く習慣があり、荷物を背中に負ぶって足元を見て歩かねばならず、歩くのも自由とはいかなかった。
 
最近は道路が舗装されており、路上に露出した石を見つけるのも難しくなった。しかし周辺をじっくり見渡せば、幾重にも重ねられた石垣がくねくねとどこかへ流れるように続く姿を容易に見ることができる。その石垣は歴史と伝統を誇る済州特有の名物なのである。ところが、未だにその価値が正当に認められていないようで、残念である。
 
石垣は古くは済州に人が住み始めた頃から、風をせき止めるために少しずつ積まれていたのだが、文献記録としては、13世紀高麗時代に畠の所有権の境界を明確にするために、当時の済州判官だった金坵の智慧で本格的に積まれ始めた。15世紀になると、石垣の機能は拡張し、馬をしっかりと管理する為にも積まれた。馬が多く牧場が大きくなり、馬による農作物の被害が増えて、「田垣」はさらに増えて、海岸の村では波が高く家を保護するために「戸垣」を積んだ。往々にして「狂風」が吹き荒れるので、村の路や路地に石垣を積んで風の被害を少なくしようとしたのが、現在の壮観をなす済州の石垣なのである。
 
もっとも、他国や国内の他地域にも石垣がないわけではない。しかしながら、済州にだけ石垣が多いのは、風土的な影響のせいだと言える。石垣が発達するようになったのは偶然ではないのである。夏に集中的に襲ってくる台風もあって、ただでさえ低くしてある済州の草家なのだが、そこにさらに石垣をつくって風を塞ぐように工夫したのである。
 
   
▲ 石垣作り  撮影: 金唯正
実際、済州は石の島といって差し支えない。済州の人々は石の上で生まれ、石の上で埋められる。石で生活用具と石像を作り、本郷堂の垣根を積んだ。石は重い代わりに耐久性がある。済州は雨が多いために外に置いて使うものはすべて石でなくてはならなかった。今では美しく見える石の山や石ころの壁も、耕作するたびに面倒で処置に困り、窮余の策としてそのように積んだものであって、後にそうした石は死者の終の住処の垣根としても利用されるようになった。以上のように、石垣が済州文化の象徴になることができたのも、石が多いという環境と闘ってきた済州の人々の忍苦と努力のおかげである。先代の苦痛は時として後代の幸福にもなる。根源的に言えば、見えるものは見えない力のおかげで成し遂げられものなのである。
 
といったように、生と風土、そして牧畜産業のために作られた石垣が今では美しい景観の主人公となり、観光の先頭に立って牽引役を果たしている。しかしながら、急激に海の石垣や山の石垣が壊され、草家の石垣までもコンクリートに押され、急速に消えつつあり、済州の景観は次第に特有の風土的な特性を失いつつある。四方八方に通じる将棋盤のような道路網、分別なくどこでも建てられているアパート団地・ペンション・リゾート、潮間帯を破壊する過度な海岸道路建設は、済州の美しい石垣を破壊する主犯である。そのせいで、環海長城のような貴重な石垣が壊され、数百年受け継がれてきた山垣と畠の石垣が瞬く間に消えてしまった。積むには数百年の大仕事なのだが、壊れるのは一瞬間の刹那、貴重な先祖の遺産を守れない子孫たちの愚かさをどうすればいいのだろうか。
 

 コラム : 金唯正(美術評論家 )   contributor@jejujapan.com

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